ライフプラン解説
子供が独立してからの 30 年を「持たせる」取崩し順序の話
FIRE 後の 30 年は「取崩し順序」で決まる
FIRE 達成の議論は「いくら貯める」に集中しがちですが、 実は その後の取崩し順序 で老後資産が数百万〜数千万円変わります。
子供が独立してから亡くなるまでの 30 年。 この期間を資産で「持たせる」ための取崩し戦略を、人生コンパスでの試算例とともに解説します。
取崩し順序が結果を変える理由
老後の取り崩しは、複数の口座 (NISA、iDeCo、特定口座) から順番に行います。 この順序が結果に大きく影響する理由は 2 つ:
- 税率の違い: 同じ 100 万円取り崩しでも、NISA は税ゼロ、特定口座は 20%。 手残りに 20 万円差
- 運用継続期間の違い: 残った資産は運用継続できる。 後から取り崩す口座ほど長く運用 → 複利効果大
原則 1: 「種別優先」— 特定口座 → NISA → iDeCo
多くの専門家が推奨する基本順序:
- 最初: 特定口座税効率が悪く、損益通算の選択肢を残すため早めに使い切る
- 次: NISA非課税のメリットを長く維持しつつ、必要に応じて取り崩し
- 最後: iDeCo受給開始 (60-75 歳) 後の取り崩し、退職所得控除を活用
この順序で、税負担を最小化しつつ、運用継続できる期間を最大化できます。
原則 2: 「種別内利回り順」— 低利回りから先に
意外と知られていないのが、同じ種別内でも順序が結果を変える こと。
例えば、特定口座に「個人向け国債 (利回り 0.5%)」と「全世界株 (期待利回り 5%)」が 両方ある場合、個人向け国債から先に取り崩す のが基本戦略です。
理由:
- 低利回り口座を先に減らす = 高利回り口座を運用継続
- 残る資産の期待利回りが上がる
- 長期で見ると老後資産が大幅に増える
「低利回りから先に崩す」を「高利回り温存戦略」と呼ぶこともあります。 人生コンパスではこれがデフォルト設定。
例外: iDeCo の出口は別ルール
iDeCo は 60-75 歳の間で受給開始でき、一時金 or 年金 or 併用 から選べます。 ここの判断は「退職金との関係」「退職所得控除の活用」が絡んで複雑。
この点は別記事「iDeCo 出口戦略」で詳しく扱います。 基本原則は 「退職所得控除をフル活用」 です。
4 つの戦略を比較
人生コンパスのデフォルトシナリオ (40 代夫婦、FIRE 達成 55 歳) で、 FIRE 後 30 年間の取崩し戦略を比較しました。
戦略 A: 種別優先 + 低利回り先 (推奨)
- 特定口座 → NISA → iDeCo の順
- 各種別内では低利回り口座から先に
- 85 歳時点の残資産: 約 3,800 万円
戦略 B: 種別優先 + 高利回り先
- 順序は A と同じ、種別内は高利回りから
- 85 歳時点の残資産: 約 3,200 万円 (戦略 A より -600 万円)
- 高利回り口座を早く減らすため、複利効果が薄れる
戦略 C: 全口座一律比例で取崩し
- NISA / iDeCo / 特定口座から同比率で取り崩し
- 85 歳時点の残資産: 約 2,800 万円 (戦略 A より -1,000 万円)
- 税効率が悪い (特定口座を温存しすぎ)
戦略 D: iDeCo を最初に取り崩し (NG)
- iDeCo を受給開始後すぐに使い切る
- 85 歳時点の残資産: 約 2,200 万円 (戦略 A より -1,600 万円)
- 受給時の累進税率で大きく持っていかれる + 非課税口座を早く使い切る損失
戦略 A と D の差は 1,600 万円。これは「順番だけ」の差です。
取崩し順序を意識する 3 つのタイミング
取崩し戦略は、FIRE 達成後の任意のタイミングで見直せます。特に意識したいタイミング:
- FIRE 達成時 (55-60 歳前後) — 基本戦略の確立
- iDeCo 受給開始時 (60-75 歳) — 一時金 vs 年金の判断
- 市場暴落時 — 一時的に取崩し抑制、回復後再開
人生コンパスの取崩し設定
人生コンパスでは、シナリオの「想定」セクションから取崩し戦略を選べます:
- 種別優先:
tax-efficient(推奨) /taxable-first/nisa-last等 - 種別内順序: 低利回りから / 高利回りから
4 つの組み合わせを試して、85 歳時点の残資産がどう変わるかを比較できます。